吉野朔実,読書吉野 朔実,小学館,小学館文庫,恋愛的瞬間

恋愛的瞬間1

「人は幸福になる義務がある。」

これは、とてもいい言葉だ。

森依のいう「恋愛的瞬間」というのは、今ひとつよくわからないけど、恋愛そのものではなくて、その刹那、刹那に幸福感があるというのなら、なんとなく理解できる気がします。

結局、人が納得する形が「しあわせ」ではなくて、自分が(または自分たちが)、納得する瞬間が「しあわせ」なわけです。

好きな話は、「螺旋の中に住む」です。
誘拐された女の子の話。実は、わたしのとっては、この話の救いの部分は、付け足しにすぎないのかもしれません。
でも、それでも、物語の終わった後も、こんな風に、物語が続いていったら、幸福かも。

含蓄があるなぁと思ったのは、「恋をしたことがない」かなぁ。

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いたいけな瞳5

「薄紅」を読んで、ちょっと吉田秋生の「櫻の園」を思い出していました。

桜の花びらの散るなか、ポツリポツリという雰囲気の会話が、すごい好きですね。

「卒業生の 桜色のスカーフ
 私 あの色 好きだったな」

「私は この浅葱色が 好きよ」

「緋も 悪くない」

「杏が 気の毒」

「藤も やだな」

「萌葱は?」

「可もなく 不可もなく」

「だね」

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いたいけな瞳4

「嘘をつかずに男を騙す方法について」の次が、「花の眠る庭」。
すごい、並べ方だ。というか、この話が1人の人のなかに共存しているのがすごいです。
でも、「嘘をつかずに男を騙す方法について」は、よく読むと、2巻の「橡」と同じテーマにも思えてきます。

この巻で印象が強いのは、「花の眠る庭」と「百合の吐息」。コメディも好きですが、妖しい話に惹かれる傾向があるな(笑)
多分、おいて行かれちゃう人間にシンクロしやすくなっているのだと思います。

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いたいけな瞳3

この3巻の「いつも心にスキップを」というお話と、4巻の「嘘をつかずに男を騙す方法について」というお話が対になっています。

これは、アレですね。自由に生きている女の子が、もう決まった女の子がいる男にとっては、いかに危なっかしく見えるか(自分にとっても、相手にとっても)ということと、まだ、決めた女の子の子がいない男にとっては、どんなに魅力的に見えるかという話かな?

そして、そんな子は、どこかで案外、自由な自分をしばって欲しいと感じているのかも。
あぁ、これでは、4巻の感想だ(笑)

惹かれる話は、「夢喰い」。
XPのの女の子を外に連れ出してしまうお話。

それは、辛い記憶なので、記憶のなかに封印されてしまいます。

はじめて陽光のなかに出た女の子の気持ち。
ずっと、大切に守ってきた女の子を亡くした親の気持ち。
そして、女の子を光の下に連れ出したかった子どもたちの気持ち。

物語にかかれていないことまで、いろいろと想像できてしまう今の自分は、もしかすると、物語にたいして以前よりも不純になっているのかもしれないです。

神宮は、トラウマしらずなんではなくて、きっと、燿と同じ能力を持っているのだと思います。
でなければ、あそこで、あのかっこは出来ないでしょう。
トラウマさえも、笑いに変えちゃう強さと優しさ。

「恋は季節モノだが友情はオールシーズンだ」

といって去っていく彼の「恋心」が見えるとかいたら、それは、あんまりにも勝手な解釈なのかな。

でも、そんなこと言っているときは、たいがい恋してて、必死に自分に言い聞かせているときだと思います。

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ジュリエットの卵2

全2巻ということで、これで完結なんですよねぇ。
なんか、すごいところでお話が終わっています。

たしかに、「終わり」っていう雰囲気はでているのですが、これ、解決とかそういうことは、一切、されていませんねぇ。

ただ、人が出会って、変化があって。その変化のみを追っていったという感じです。

そういう意味では、広がった物語が一点に収束していくような快感は、少ないかもしれません。

でも、確かに、生きていくってそういうことか?

という気もします。