不思議な少年3
おもしろいよねぇ。題名は、「不思議な少年」なのに、少年の方が、
「人間は不思議だ」
なんて言っています。
少年の望むものは、いったいなんなんでしょう。
ちょっと、それが見えるような気がする3巻です。
主人公が、けっこうダメダメちゃんで、脇に天才的な人が配置されているので、この主人公っていったい……と思っていました。
「根っからの臨床医」。現場の人間であるということが、この主人公を形作ってるもののようです。
今までの物語だと、「臨床医」であることと「研究医」であることは、けっこう対立的にかかれていたのかなぁと思いますが、今回は、そのあたりのことも、すごく、平等にかかれていくようです。
でも、自分の身近な人が、次々に病に冒されていくというこの物語は、ものすごくきつい。きつすぎる感じがします。
SFや思想に逃げる様子もないようですし、ここからいったい、どんな、物語を見せようとしているのでしょうか。
心の病の難しさは、その境界をどこにおくかということが、わからないことだと思う。
優しい世界であるならば、多少の違いはおおらかさのなかで隠されるのですが、お互いにギスギスした世界の中ならば、やっぱりちょっと人と違っているというのは、生きにくい。
生きている文化の差異によっても、狂気と正気の境目は動いていく。
できることなら、優しい世界で生きたいけれど…。
戦争を終わらせるために勝ちたい。
でも、勝てば戦争は終わらない。
必要なのは、敵。
それが、本物であるかどうかは問わない。
そうして、ズルズルと連鎖は続いていく……。