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二〇〇二年のスロウ・ボート

彼が治療に何の効果もなくて、自分がそんな者必要なく良くなったのだと考えるのなら、それはそれで、結構。
つまり、治療がとても上手くいったということなのだと思う。

という感じで、アレのリミックスということで、かなーり、ギチギチに警戒して読み始めた「二〇〇二年のスロウ・ボート」ですが。
コレは、アレの100倍ぐらいおもしろいです。
というか、どこまで行っても、ストーリー指向です。古川 日出男。雰囲気だけで書いているアレとは大違いだと思います。

まあ、これはわたしがストーリー指向であるためだと思います。

そして、これも偽史。ここでも、さりげなくフィクションの歴史が、現実を侵略してきます。
徹底している。

特に好きなシーンは、ブラック・ジャックの様に、女子高生が制服の裏の包丁を見せたるところ。
そこから先の疾走感は、最高です。

そういえば、このお話では、走るっていうのが、ものすごい大事なテーマになっています。脱出のために。そして、何かを得るために走る。
最後の手紙まで、本当にドキドキして読みました。

でこねぇさんは、この本を見て、

「これ、あの怖い話書く人だよねぇ」

といっていました。
わたしは、この人、怖い話というイメージはまったくないのですが。
ひたすら、中二的にかっこいい。

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海よりも深く5

十三をめぐる過去、現在、未来の女が出てくる1巻。
少女マンガ的に、1番の相手を決めたら、1番を最優先してくれるある意味理想の十三です。これが、少年マンガの場合だと、1番の相手はいつも後回しになっちゃうわけですが。

それでも、この人のマンガが凄いのは、その十三がでも、けっこう流されやすいぞということまでかいちゃうとろこですねぇ。シビア。

この展開読んで、

「十三、オイオイ」

と思うよねぇ。
まあ、これは未来が一瞬のうちに見せられている所為もあって、そりゃあ、そう言う展開もありうるとは思うのですが。
つまり、これはなにをかいているかというと、元妻と一緒にいるときに、眠子と出会っていたら、十三は眠子とは付き合うことは絶対になかったということです。
いや、そうかくと、そりゃあそうだと思ってしまうのですが、じゃあ今、眠子のことを無二の存在と思っている十三って……。

運命とかではなくて、タイミングで「そのたった1人」は決まるっていうことなんですよねぇ。まあ、もちろん相性とかいろいろあるんだろうけれど、「そのたった1人」が決まるのは、その時、その時のタイミング次第。タイミングが違えば、その相手も代わってしまう。

そして、多分、未来の妻の性格がとっても悪くても、眠子の前で見せる姿と十三の前で見せる姿は違うので、見せられた未来と同じように、それなりに倖せなカップルになれるという。

この作者、気の強い人かくの上手いなぁと思っていましたが、作者自身もすごい強いし、性格悪いものをもっているなぁ。
そして、それが見事に作品をつくっている。

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ワンダー・AZUM HIDEO・ランド

なかなか読めない小品を集めたということで、嬉しい。
やっぱり、全部読みたいという欲望はあります。

まあ、それでも、作品としては微妙なものが多いのも確かです。
他の本の解説としてかかれたものなんかは、それと一緒でないとネタが難しいところもありますし。
それでも、「幻魔大戦」とか、メチャクチャおもしろいのもあって、買って後悔はしていません。まあ、「幻魔大戦」は元ネタ知っているからだろうというのもありますが。
まあ、読まないと、読む価値があったかどうかなんてわからないですしね。

不満があるとしたら、けっこう読んだことあるのもあったということかなぁ。
「るん・かん」の文庫本とかも、けっこう持ってたりするからなぁ。

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コードネームはセーラーV1 完全版

今までずっと、美奈子とうさぎって、同じ性格だと思っていたのですが、今回、コレを読んで、全然、違うなぁということに、やっと気がつきました。
美奈子、振り向かない女です。半端ねぇ(笑)

うさぎちゃんって、どっちかというと、泣き虫で、悩んで動けなくなることが多いタイプですよねぇ。実は、元気で脳天気なうさぎちゃんというイメージって、マンガ版ではそれほど強くないのかも。

それに比べて、美奈子の場合は、ひたすら動いていますねぇ。
スポーツ万能という特徴も、うさぎちゃんにはなかったです。どっちかというと、どんくさいといわれていたような気がします。

そして、美奈子が変身するたびに、アルテミスが、

「なんじゃ、そりゃ~」

っていう顔をしているところが、凄く好きです。
昔は、この本、「セーラームーン」のおまけみたいに思っていましたが、なかなか、楽しい。

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冬の円盤 最終戦争シリーズ1

さて、いよいよ最終戦争伝説シリーズです。
最初は、白泉社の花とゆめコミックス版から出ていたお話。このあたりのお話が読めたのが、この文庫シリーズが出て1番うれしかったことです。
山田 ミネコ自身が、秋田書店のプリンセス・コミックス版では、「同じ様な題名でかいていた古い作品があるけれど、あれは別の世界の話だから忘れて」的な発言をしていて、もう出す気がないのだと思っていました。
こうやってみると、でも、明確にこれらの話を前提として話がつくられています。

うーん、元気だったら、このあたりの話も、書き直したりするつもりがあったかもと思ったり。

冬の円盤

円盤が、アダムスキー型なのが、なんとも時代を感じさせます。
真砂流は、「風のし天使」の落ち着いた雰囲気からしか知らなかったので、やんちゃな感じで、ちょっとビックリしました。
まあでも、まだ子どもだったということなんでしょうね。

でも、絵柄がかわったとはいえ、星野はしっかり星野です。そして、9歳の笑を見初めているという。ちょっと、危険だな、この人(笑)

わたしのなかでは、すっかり大人組である笑にも、こんな時代があったということで、やっぱり、山田 ミネコは成長をかけるマンガ家なんだなぁと思います。

誕生日がこない

「誕生日がこない」
まず、題名が凄いですよねぇ。

恋愛については、なんというか無茶な展開というか時代を感じたりもしますが、それでも、こんな話をかく人って、まあ、いないよねぇと思います。

笑は、自分の体が弱っていくのを感じています。星野の迎えが自分の死に間に合うかどうかと不安に思っている。
でも、星野の方はというと、笑が死んでしまう未来をそれこそ、何月何日まで知っていて、それを待っている。

実は、お話の軸ってそれだけで、あとの登場人物たちは、それぞれの人生を右往左往しているだけという感じもします。

時間移民として、笑を連れて行くことは正しいことかどうかひたすら悩み、自分の魅力にも悩み、絶対的に笑の意志を尊重する星野の真面目さ。でも、笑にちょっかいをかける男子には、冷静にきつい一言をかけるところとか、星野かわってないなぁと思います。

西の22

唯。
秋田版の唯しか知らないわたしの唯のイメージは、サイボーグ。
それから、「木は花の天使のオレンジ」というあの素晴らしい題名の短編での子ども時代の姿だけです。

ということで、この話を読んだ時は、唯がサイボーグじゃなくて、彼女の方がサイボーグだったりして、いろいろ戸惑いました。
あと、カーニバルな場面が、なんでこんなに続いているのだろうという印象がありました。

これはでも、アストロノーツとマリンノーツとの文化の違いとか、世界の違いをかくためには、必要だったのかなぁと今読むとわかります。

侏羅は、もっと弱くて、もっと利己主義で、もっと人間的で、もっと魅力があるというのが、このお話の中心。そして、物語は、いよいよ最終戦争が始まり、怒濤の悲劇へ。この突き放したラストは、今読んでも凄いです。

ペレランドラに帰りたい

最初、この2人が、ダ・マーヤとバーツマコだということがわからずに、なんでこの話がここに収録されているのだろうかと悩みました。
特にダ・マーヤ。長髪でないので、全然、わからなかった。星野とかは、顔が変わっていてもわかったんですけどね。
そういえばでも、秋田版の方でも、この2人の話はあったかな。

この次の「遙かなり我が故郷」は、まだSFなのですが、これは、本当にSFだったのかどうかもわからない感じの話になっていて、そこがまたミステリーな感じなのです。

まあでも、金星は滅んだはずなので、あれは戴冠の花火ではないような気がします。

山田 ミネコは、シナイとアビラとセリスなら、セリスでありたいと願うようですね。

遙かなり我が故郷

コメディな2人……でもないですねぇ。
けっこうシリアス。
でも、あとがきを読むと、また、コメディに(笑)いや、コメディと呼ぶには、重いかも。

ダ・マーヤの髪がちょっと伸びて、今の顔に近づいて来た感じです。
この2人の関係って、どれぐらいモデルの2人のことを反映しているのだろうかと、ちょっと気になりますねぇ。
詩とか見ていても、かなり長い付き合いなんだなぁと思うし。リアルな関係を物語に持ち込むのは、けっこう勇気がいると思うのですが。

そういえば、バーツマコは、テレポートができたのでした。