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アラビアの夜の種族3

さいごは、「災厄の書」の内側の物語よりも、外側の物語が力を持っての終了でした。
そのあたりは、「砂の王」ファンとしては、やっぱり純粋に「砂の王」の続きが……とも思うのですが、「砂の王」を越えていく方法は、これしかなかったとも思えます。

誰に「災厄」がふりかかるかについては、知っていた気もします。
でも、どういう因果で、そこに「災厄」が運ばれていくのかというのは、なかなかのミステリーでおもしろかったです。

古川 日出男の書く話は、常に偽史としての物語です。
そして、現実以上に、物語こそが力を持つという強い思いがあります。
そこが、現実よりも物語の方にあこがれて、「いってかえってこない」方がしあわせなんじゃないかと思っているわたしみたいな人間にとっては、とっても惹かれるところなんだと思います。

これからも、かえって来られなくなるような物語を読んでいきたいです。

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アラビアの夜の種族2

ついに、「砂の王」の続きが……と思って読むと、テンションが上がる部分もあるのですが、肩すかしな部分もありました。

この本自体は、ものすごくおもしろいのですが、純粋な「砂の王」の続きも読みたい感じです。
わたしが、あまりにも「砂の王」が好きすぎるのだと思います。

うーん、魔術のパートになると、急に表現が剽軽になるところも、おもしろいのですが、なんでも、砂の王とくらべてしまう病気にかかっています。

サフィアーンは、ウォーマスターにはならないのか??あの絶望感が、好きで、あの続きが読みたいのですが……。

それは、無理?

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アラビアの夜の種族1

もう、スタートから興奮しまくりですよ。
あの「砂の王」の続きがよめるというので、メチャクチャ楽しみにしていた小説です。

「砂の王」は、ゲームボーイ版の「ウィザードリィ外伝2古代帝王の呪い」のノベライズとして書かれた小説で、これがもう、ゲームのノベライズと思えないほどおもしろいのです。
ウィザードリィの小説としては、ペニー松山の「隣り合わせの灰と青春」も名作なのですが、これは、渋い感じの小説で、「砂の王」は、濃厚でかっこいい小説でした。

ビデオゲームが好きなので、ゲームのノベライズもそれなりに好きだったのですが、小説として圧倒的におもしろいと思ったのは、このウィザードの小説2つです。
「砂の王」がどれぐらいおもしろかったかというと、これを読んだことによって、それまで2年ぐらい地下3階でほっぽかれていた「ウィザードリィ外伝2」をひっぱっりだしてきて、あっという間にクリアしたぐらいおもしろかったのです。
……すごい、伝わりにくい表現だけど……。

そんな、「砂の王」なのですが、1巻が出てから、ずっと2巻が出ませんでした。そんなこんなしているうちに、レーベルであるログアウト冒険文庫自体がなくなってしまって……。

そんで、あの続きは、どうなった~!!と叫んでいた小説でした。

もともと、古川 日出男を読み出しのも、あの続きが読みたかったからです。というか、あのすさまじくおもしろい小説は、続編が書かれていないのかとWebで検索をかけていて、このページを読んだからでした。

そして、とうとう、その「アラビアの夜の種族」にたどり着きました。

でも、まさか、続きではなくて、前日譚的なものが読めるとは思っていませんでした。
多分だけれど、これ、あのヴァルたちがもぐったダンジョンがどうやってできたかというお話ですよねぇ。そして、2巻目は、いよいよ、ヴァルたちの話で、3巻目で決着が……。

もちろん、「アラビアの夜の種族」は、「砂の王」とは違う作品だということを知りつつ。そう期待してしまいます。

でも、この人、本当に偽史が好きですね。
今まで読んだ小説は、ほぼすべて、偽の歴史を作る話が入っています

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沈黙/アビシニアン

古川 日出男、2冊目。いや、「砂の王」1巻目からかぞえて、3冊目か。次は、いよいよ「アラビアの夜の種族」で、これは、「砂の王」を含んだお話だそうです。
期待がふくらみます。

沈黙

偽の歴史。
古川 日出男、嘘を語らせたら天下一品です。
今回は、その嘘の語り方の秘密を垣間見競るようなお話でした。そして、多分、それも嘘。彼自身は、そんな方法で物語を生み出しているわけではない……ような気がする。

音楽と悪の戦いの記録。でもそれは、あまりにも絶望的な戦い。
竜を追うものは、いずれ自分も竜になる運命をもつ。
スリリングでした。

アビシニアン

「沈黙」が壮大な大嘘だったのに対して、こっちは、テーマ的には、個人の再生みたいな小さなテーマです。
でも、その再生の仕方が、ものすごく気持ちよくって、こっちの方が好みかも。まあ、「沈黙」は、けっこう救いのない話だったので。
おもしろさでは「沈黙」なんだけれど。
でも、なんでそれが救いになるかのは、実は、わたしには、よく理解できていないんですけどね。

しかし、文学で文字の否定をするところが、この人らしいどんでん返しです。
そして、女の子が、物語がはじまった時と、別人に成長しているのですが、その変化に無理がないところが、凄い。

個人的には、「ミツバチのささやき」が、作中に流れていたのも、ツボなのです。あれ、不思議な映画ですよねぇ。兄貴とわたしで、まったく読み取ったストーリーが違っていました。

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13

2008年初の小説の感想です。 

古川 日出男。「13」。すごい。
久しぶりに、小説をワクワクしながら読んでいる自分を発見した気がします。

もちろん、いつもどんな物語を読んでるときも、けっこうワクワクしているのですが。
でも、普段は、「物語」がおもしろいと思っているのですが、この本に関しては、「小説」がおもしろいと思ったのです。

なんというか、読んでいて、ものすごく密度の濃いものを読んでいるような充実感がありました。なんか、翻訳物の小説を読んでいるときに感じる充実感と似ています。

昔、「砂の王」というメチャクチャかっこいい小説がありました。ウィザードリィというテレビゲーム1のノベライズ。
ウィズ自体、すごくおもしろいゲームなのですが、その小説は、ゲーム以上。尋常じゃなくおもしろかったのです。
1巻だけ刊行されて、未完の小説。
でも、1巻だけで、無茶苦茶おもしろい。まさに、傑作。

続きはでないのか……と待ち続けて10年以上。
「砂の王」の続きが、別の小説として書かれているという噂を聞きました。
それが、古川 日出男の「アラビアの夜の種族」でした。

今回は、この「アラビアの夜の種族」にたどり着くために、ちょっとつまみ食いのつもりで読んだだけだったのですが……。

 あぁ、やっぱり、この人、おもしろいや。

第1部のイメージは、ずっと諸星 大二郎でした。
わたしの中では、響一も、ウライネも、ローミも、みんな諸星 大二郎のキャラクターで動いていました。

でも、第2部に入って、一気に違うものに。もう、今まで見たこともない映像です。

この落差がすごい。
えっ、どんなふうにつながるの??
えっ、でも、ピッタリくる!!

そして、なによりも、あのラスト!!

ということで、以下、ネタバレありです。

  1. 正確には、ゲームボーイのソフト []