小説読みの喜び

古川日出男,読書

13

2008年初の小説の感想です。 

古川 日出男。「13」。すごい。
久しぶりに、小説をワクワクしながら読んでいる自分を発見した気がします。

もちろん、いつもどんな物語を読んでるときも、けっこうワクワクしているのですが。
でも、普段は、「物語」がおもしろいと思っているのですが、この本に関しては、「小説」がおもしろいと思ったのです。

なんというか、読んでいて、ものすごく密度の濃いものを読んでいるような充実感がありました。なんか、翻訳物の小説を読んでいるときに感じる充実感と似ています。

昔、「砂の王」というメチャクチャかっこいい小説がありました。ウィザードリィというテレビゲーム1のノベライズ。
ウィズ自体、すごくおもしろいゲームなのですが、その小説は、ゲーム以上。尋常じゃなくおもしろかったのです。
1巻だけ刊行されて、未完の小説。
でも、1巻だけで、無茶苦茶おもしろい。まさに、傑作。

続きはでないのか……と待ち続けて10年以上。
「砂の王」の続きが、別の小説として書かれているという噂を聞きました。
それが、古川 日出男の「アラビアの夜の種族」でした。

今回は、この「アラビアの夜の種族」にたどり着くために、ちょっとつまみ食いのつもりで読んだだけだったのですが……。

 あぁ、やっぱり、この人、おもしろいや。

第1部のイメージは、ずっと諸星 大二郎でした。
わたしの中では、響一も、ウライネも、ローミも、みんな諸星 大二郎のキャラクターで動いていました。

でも、第2部に入って、一気に違うものに。もう、今まで見たこともない映像です。

この落差がすごい。
えっ、どんなふうにつながるの??
えっ、でも、ピッタリくる!!

そして、なによりも、あのラスト!!

ということで、以下、ネタバレありです。


ラスト、今まで押さえていた物が、一気に噴き出したような感じがしました。

今まで、いろいろな幻想的なことを「現実」を積み上げてつくっていって、そして、「幻想」に流し込む。

コツコツと積み上げてきた物を一気にダメにしてしまうことすらありうると思うのに、本当に勢いよく、天使と異界を現世に出現させました。

そして、それでも壊れずに続いていく日常。

あぁ、「アラビアノ夜の種族」は、これ以上なんだろうか?

今年も、期待一杯で本に向かうのです(笑)

  1. 正確には、ゲームボーイのソフト []