きみのカケラ8
リアルタイムで、体が成長していく子どもたちをかけるマンガ家っていうのは、けっこう限られていると思います。
高橋 しんは、その希有な一人ですね。
あと1巻。
どんなラストでも、目をそらさずに。
えーと、「最終兵器彼女」みたいな世界で展開する、帰ってこない夫を待つ奥たんのお話……。
「最終兵器彼女」みたいな世界……というのは、正確ではないか。あの世界は、戦争があって……ですが、このお話では、謎の植物の大発生(?)のために、東京が壊滅状態みたいになっている様です。
もうすぐ、世界の終わりが来る……。
そんな雰囲気のなか、奥たんフィルターで見る世界というところが、ちせフィルターでみる世界だった「最終兵器彼女」と似ていると感じたのかも。
今回の作品の大きなテーマの1つは、「食事」みたいです。
わたしみたいに、雑食の人間にはわからない、こだわりとうんちくが、ぎっしりとはいっています。
無邪気さと、お米を食べるときとかのエッチさと、生きていく必死さ。
本当に、高橋 しんは、計算し尽くしてかいています。それは、ほめ言葉には聞こえないかもしれないけれど、今のこの特別にカラーで単行本をだしてもらえる地位とか、いろいろなものを、実力で勝ち取ってきた人なのだと思います。
次は、「きみのカケラ」が読みたいなぁ。
坂道ばかりの街を、汗を飛び散らせながら駆け回った。
これは、彼女の「少年時代の最後の夏」の物語。
と書いて、手が止まった。
高橋 しんがかきあげた、あざといまでにキラキラしているこの物語が、名作でないわけがない。
けど、登場人物が深く書かれない部分に、どこか行き当たりばったりのストーリーに、不満がないわけではない。
どう受け止めていいのか、迷っているのかも。
でも、それはこの物語が若いスタッフたちの(?)共同作業で作られているからなのだと思います。
多分、高橋 しんが、一人でつくりあげたなら、もっと計算され尽くした物語になったはず。
でも、それでも、いいのかもしれないという気がしています。
主人公が、少年ではなく、くわえタバコの大人の女性であるという、ささやかな悪意(?)だけに、なんとなく高橋 しんの存在を感じたりするのですが。
だって、多分、行き当たりばったりだったんです。自分のこと以外は、それほど深く考えてたわけではなかったんです。
でも、大切な物のことは、わかっている気がしていた。
少女マンガだったとは、あとがきを読むまで気づかなかった。
メロディという雑誌は、ふところが深いなと思います。
あぁ、なんだかとっても、とりとめもなく。
「忘れたくない!」
シロに生まれたたった1つの欲望。
同じコトを繰り返しているようにみえて、人は螺旋の形で少しずつ成長していく。痛みを伴いながら。
「いいひと。」の高橋 しんは、そこにある「辛い現実」や、「きつさ」を知っていながら、主人公一人に全部それをおっかぶせて、読者にすらそれを見せないところがあった。
でも、「きみのカケラ」は、その痛みをできる限りみせようとしている。
そりゃ、青年誌の読者ですら耐えきれなかったこと、少年誌では無理だ……。そう思うけど、それでも、この物語を最後まで読んでいきたいと思わせるそういう物語です。
無事に完結して欲しい。
祈るように思っています。