陰陽師 瘤取り晴明
今、「こぶとりせいめい」と打ったら「小太り晴明」とでてきたので、ちょっとウケていました。
1冊1話なのですが、長編という感じではないです。絵がいっぱいある中編という感じ。でも、懐かしの登場人物たちがいろいろ出てきて、なんとなくサービス一杯な気がします。
話そのものは、瘤取りじいさん(=鬼と宴会)、晴明+博雅ということで、まあ、オチまですっかり読めてしまう部分はあるのですが、雰囲気を楽しむものなのかなぁと思います。
中島 敦といえば、高校の教科書で読んだ「山月記」です。
それ以外は、知らない。
多分、この頃、平井 和正の「ウルフガイ」とか、夢枕 獏の「キマイラ・吼」とかを読んでいたのだと思います。
で、わたしの中では、この「山月記」は、それらの物語の同列の物語として記憶に残っております。
人が、獣に変わっていく。そういうお話。
ウルフガイとか、キマイラ・吼と同じ透明さが、山月記にはあるなあと感じました。
まあ、山月記の影響を、ウルフガイやキマイラ・吼は、うけているのかもしれません。
で、ものすごく、悲惨なお話だったような印象が残っています。
今回、この本で読み直してみて、でも、中島 敦は、この人が虎になる話を、重いテーマをのせながら、それでも、けっこうおもしろがって書いていたんじゃないかと感じました。
それは、「山月記」の前に「名人伝」が載っていて、こっちを先に読んだからかもしれませんが。
あと、漠然と、この人は、芥川 龍之介の王朝物みたいな感じで、中国古典に取材したお話ばかりを書いているのかと思っていたのですが、けっこう、いろいろなお話を書いていたのですね。
そして、どのお話も、メチャクチャわたしにしっくりくる話ばっかりで、ビックリしました。
おもしろいです。
日本文学、侮れない。
キマイラと陰陽師が、この人の作品の中では、1番好きです。
なにを書いていても、釣りにしても、格闘技にしても、伝奇にしても、夢枕 獏が書くと、全部、同じ色をした物語になるよなぁと思います。
でも、それが、またいいと思います。
同じことを語りながら、少しずつ少しずつ、確信に潜っていっている気がします。
多分、今、たくさんある物語のうちのいくつかには、決着がつかないままになってしまうものもあるのだろうなぁ。
でも、きっと、夢枕 獏が書き続ける限り、わたしは読み続けると思います。