救いの手

ロアルド・ダール,子ども,宮下嶺夫,読書

マチルダは小さな大天才 ロアルド・ダール コレクション 16

うーん、はじめ読んだときは、悪い方のダールだと思ったのだけど、いい方のダールも混ざっている感じです。
それは、マチルダとミス・ハニーの魅力のせいです。
本を読む人に対しては、それだけで、好意度がアップするわたし……。

あと、テレビに関する考え方は、わりとダールと一緒なんですよねぇ。特に、子どもとテレビについては。

大切なことは、マチルダみたいな環境におかれている子どもは、実はけっこういるということ。
そして、もっと大切なことは、そのなかでマチルダみたいに育つことは、メチャクチャ困難だということ。

以下、ちょっと物語のラストにふれているので、隠します。


例えば、お兄ちゃんは、その生活に疑問を持たずに、親について行ってしまいます。

ましてや、マチルダのような才能をもっていることがわかれば……あとは、利用されるだけ。

マチルダほどあっさりと、親と別れを決意できるのならば、それはかなり幸運です。どんなに酷いことをされても、子どもは、自分を責めて、親を庇うことの方が多い。
だって、「自分が変われば、親がマシになる」と思わなければ、生きていけないから。「どうしたって親は酷い」ことに気づくということは、これからの自分の生活が、よくならないというのと同じ意味だから。

マチルダの怒りは、ある意味当然です。でも、それは、実は親にだけむくものではありません。多分、そうやって育った子は、他の人に対しても、かなり愛情を表現することが苦手になります。

この物語は、いろんなところをある意味リアルに書きながら、そういった部分を個人の資質で簡単に片づけちゃってしまっているところがあり、そこが少しひっかかります。

でも、もし本当に、マチルダのような境遇におかれて、そして本を読み続けている子どもがいたとしたら……。

この本が、そんな子たちの勇気になることを願います。