越境者 松田優作
これが、真実の松田 優作……かどうかは知らない。
松田 優作の妻だった人が書いた人のドキュメンタリーというか、評伝。
自分の夢を犠牲にしての内助の功は報われず、若い才能のある女とデキて出て行った男のこと。でも、彼を作り上げた一部は自分であるという自負もある。
そして、けっして憎んでいたわけではない。
これはあくまでも、そんな松田 美智子から見えた松田 優作。
でも、ぼくらがテレビや映画を通してみている松田 優作よりも、多分、リアルな証言なんだと思います。
狂気のようなコンプレックスと、すべてを犠牲にして一つのことに賭ける思い。
と書けば、かっこいい。
でも、犠牲にするのは、自分だけでなく周りも一緒くた。そして、息切れした人間にかける言葉が、
「あいつは、もうダメだ」
ひでえと思う。
自分の半分ぐらい体重の女性を殴りつけて、
「殴った方がいたいんだ」
なんてことをいう馬鹿が、本当にいるということにビックリする。
それでも、えてして、強力な個性カリスマというのはこんなものか?
そして、その狂気があったから、スクリーンのなかの彼は、光を放ち続ける。