玉響 古代幻想ロマンシリーズ3
と、この巻を読んで、やっぱり、田辺大隅か?と、勝手に思っています。
どうやら、大化の改新から50年ぐらいの出来事をいろいろな角度から切り取って書いていくみたいですね。
ダイナミックな時代の動き(突然、平安時代や、鎌倉時代を舞台にするようなこと)は、なさそうです。
今回は、不比等の過去。
流されて、真人、史人と名前や境遇が変わっていくのは、自分が弱いためだと強くなろうとするお話。
不比等という名前には、自身の決意も込められているようです。
この人は、藤川 圭介の「宇宙皇子」の第1部の敵役であることぐらいしか知らないのですが、こんな過去があったと思うと、けっこう、今の彼も理解できるような気がします。
ところで、超能力者が狂言回しと書きましたが、実は真の狂言回しというか、影の主人公は、田辺 大隅というお祖父ちゃんではないかと思った。
今まで、聞いたことない人だ。
検索をかけると、長岡 良子関係のページが、いっぱい出てきた(笑)
どうやら、京都、滋賀県のあたりに、実際にいた人らしいということはわかるのですが……。
「夜の虹」は、現実的な理想(管理された社会)を追う不比等と、小角たち異形の者たちの対立のお話。
最後の不比等の一言は、けっこう、印象的です。
そうしなければならない彼の悲しさが伝わってきます。
カラーの絵を見ていると、「百億の昼と千億の夜」のころの萩尾 望都みたいな雰囲気です。
ストーリーは、最初の話とかは、山田 ミネコの「緑の少女」を思い出してしまいました。
あと、少女が一瞬で大人になっている「葦の原幻想」のテーマとかも、けっこう、似たものを感じます。
そして、短編連作で話を続けていって、狂言回しに超能力者(神)たちがいるというのは、なんだか、神坂 智子の「シルクロードシリーズ」を彷彿とさせます。
第1話が掲載されたのが、1984年だから、多分、その辺の作品のというか、作家たちの影響というのはあるのだろうと思います。
それでも、いろいろなものを吸収して、自分独自の世界をつくっているなぁというところは、好きです。
あとの話にでてくる史は、多分、藤原 不比等なんだろうなぁ。
あの人って、イメージ的に、恋をするような人ではないので、これからどうなっていくのかなども、気になります。
短編連作で、いろいろな角度から切り取っていくという形も、この物語にとてもあっているなぁと思います。