みやこじまの時間はゆっくりすぎていく…

藤川桂介,読書

シギラの月

えーと、はっきりいっておもしろいか、おもしろくないかという、おもしろくない方に傾く話なのですが、なんともいえない不思議な味わいがあるお話でした。

それは、この物語のなかの時間の流れ方と、その時間の流れの中で生きている人たちの感覚です。

以下は、まあ話を読めば、読者にはすぐに気がつくことのような気もしますが、ネタバレありということで。

蜜牙古島(みやこじま)神様と人々のお話。
メインになるのは、捜神士の頭領の一族です。捜神士というのは、蜜牙古島に平穏をもたらす女神を捜すことを職業とするものたちで、その長は、女神を見つけられないまま早死にしてしまうという……。

最初に載っている捜神士の頭領の家系図を見てみると、だいたいその一族、7代ぐらいの名前が書いてあります。最終的な主人公は、その捜神士の最後の代の頭領イズゥです。

で、その捜神士にかかわってくる1人美しい女の人がいます。この人は、どこの集落にも属さずに1人暮らしを続ける女性。
蜜牙古島の伝説に出てくる女神ではないかといわれた女性シギラと同じ名前をもち、歴代の捜神士たちに、とても的確なアドバイスをし続けてきた女性。
しかも、この人、おじいさんの代からのつきあいなのに、イズゥが惚れてしまうほど、年を取らない!!!

普通、思いませんか?

女神、発見!!!

でも、捜神士たちは、全然、そんなこと不思議と思わないんですねぇ。

というか、この7代も続いた捜神士っていう仕事ですが、1代目が

「女神を見た」

と言って、それからずっと女神を捜し続けているのですが、その間、1回も女神を見つけられないままなんですよ。
捜神士の仕事って、女神を求めて、島をあっちにフラフラ、こっちにフラフラするだけ??それを、7代!!

しかも、ずっと見つけられなかったということは、その間、誰も、嘘ついてすら「女神を見つけた」っていった人がいなかったということで、よく、そんな仕事、続いたなぁ!

なんとも、蜜牙古島は、動乱の時代を迎えているみたいなのですが、のんびりした話です。

で、最後の捜神士イズゥも、女神を捜し出せずにいたわけですが……、

「ちょっと最近、女神に近づいてきた気がする!!」

といって、はじめたことが、月をみながら三線を弾くという……。
なんとも、のんびりした話です。

こんなふうにか考えていると、あんまりおもしろくないこの話が、もしかして、すごいおもしろい話なんじゃないかと思えてきます。

ラストもすごいです。
まあ、いざこざが一段落して、イズゥは、シギラに結婚を申し込もうと思います。

この時点で、重臣たちは、

「シギラは神なのではないか」

と真剣に話し合っているのですが、そんなこと露とも思わない捜神士の頭領(笑)

まあ、告白をと思っていたところに、シギラからも、話があるというこで、話し合いの日取りを決定します。

4カ月後。

4カ月!!
告白して返事が…とかではないんですよ。話し合う日が、4カ月後(爆)
すごい時間感覚だ。というか、お前ら、毎日、あえるんとちゃうんかーーーい!!

そして、当日の告白の日、

シギラ「あなたは、捜神士のつとめを立派にはたしました」

イズゥ「えっ???まだ、女神様、見つけていませんよ???」

シギラ「実は、わたしが女神です」

イズゥ「えーーーーー!!」

みたいな感じで終わります。

えーーーーーっ!!