陰陽師 太極ノ巻
安定しておもしろいです。
なんとなく、頓智っぽいお話が、最近は好きです。虹の話とか。
魔鬼物小僧とかも、お話は、かわいそうなお話なのですが、
気づけよ真念!
とか、ついツッコミをいれたくなります。
でも、良いお話です。
乱歩のデビュー作です。
推理小説を読み込んでいるだけあって、かなりひねくれたつくりになっています。
わたしは、どうせ推理ものならストレートな推理ものの方が、よいなぁとちょっと思います。
チェスタートンのブラウン神父をちょっと思い出しました。
こっちも、「二銭銅貨」と同じく、ひねくれたところがあります。
ただ、こっちのひねくれかたの方が、性格はいい(意味不明だな)と思ったりしました。
あとがきの「逆さまトリック」という話が、おもしろかったです。
でも、ちょっと無理があるかな。こういう無理が、乱歩らしさなので、悪くないです。
初期短編集だけあって、いろんな乱歩の趣味がでています。
これは、自分が自分を殺してしまうというイメージ先行の変な趣味が出ています。
明智小五郎登場。
しかし、このトリックは、卑怯な気もします。
でも、現実的には、こんなもんだろうなぁ。
不審者は、赤い車に乗って……。
これは、思い入れのある1編です。
大学の心理学の講義のときに、あらすじを聞かされて、謎解きの部分をやったことがあります。
見事だまされて、感心した覚えがあります。
多分、それが、ファースト江戸川乱歩かな?いや、少年探偵団とかのシリーズは読んでいたか?
これはまぁ、トリックがバレていたといえばバレていたのですが、爽やかな読後感で、嫌いじゃないですよ。
あぁ、乱歩の読者は、もっと変な趣味なのを求めたのかも。
このどんでん返しが嫌われたということは、やっぱり、乱歩って、変な小説を求められていたんだなぁと思います。
うーん、こんな恋愛は、きらいじゃないですけど、それをみて一喜一憂する気持ちは、わからないかも。
というか、女の子の暗号に気づかないというところが、間抜けすぎです。
そして、女の子のその後も、ちょっとよめちゃいました。
同じ秘めた恋愛の話ですが、「日記帳」より、こっちの方が数倍好きです。
それは、もしかしたら、「算盤が恋を語る話」という題名が、好きというのも大きいかも。
この恋は、かなって欲しかったなぁ。こんなことする男の人は、けっこう好きかもしれない。
これほどマメではないのですが、内気なところが自分に通じるような気がするんだと思います。
それほどつまらない作品とも思えないのですが。
しかし、ここでペシャンコになっても、後、あれだけの作品を書くんだから、偉大だと思います。
これは、軽快で落語っぽくっておもしろいです。
肩の力を抜いて伸び伸びと書いた感じです。
ミステリーというより、怪談っぽいお話です。
まあ、ポーとかも、ミステリーとホラーと両方書いていたし、けっこう相性はいいのかも。
でも、怖さにオカルト的なギミックを使わないところは、乱歩の意地だなぁ。
これは、「白昼夢」というより、「盗難」と同じ落語っぽいお話です。
これは、これでわたしは好きです。
推理するから、間違える?みたいな感じがありますねぇ。
でも、夢遊病者ネタは、1回使っているので、新鮮みとしては、難しいかも。
このあたりの発想が、後のそのものズバリ「怪人百面相」につながっていくんだろうなぁと思うと、なかなか、味わい深いものがあります。
まあ、嘘オチ、夢オチは、あんまり何回もするもんではないのですが。
乱歩お得意の退屈さんも、出て来ます。
さすが、すべてがつまっている初期短編集です。
しっかし、明智って、ものすごい正義の熱血漢だと思っていたのですが、それって、少年ものだけのイメージだったんですねぇ。
いや、すごい彼は、自首することすら見抜いていたからそう言ったのかも……。
まぁ、実は、気づいてなくても、告白されればそう言うだろう……。
女は、こわい。
うーん、上手に書いたら「幻の女」みたいな傑作になりそうですが。
そして、「幻の女」と同じように、後半は、メタラクタラになるという……。
これ、ありえなーーいとか思いながら、おしりムズムズしますよねぇ。
変態の乱歩パワー炸裂という感じです。
そして、こういうのが、思いっきり受けるその時代って……。
これ、「一人二役」の裏表のような話だなぁ。
で、結論は、やっぱり女はこわい……。