出戻社員伝
「聖凡人伝」の続き的な。
まあ、四畳半の物語って、基本、どれも同じ感じで、なんで主人公が違うのかとか、違うことで何が変わるのかとかはあまりない……気がする。
まあ、正確には「聖凡人伝」では、毎回必ず自殺者が出るとか、それなりのテーマはあるのだが、テイストは、そんなに変わらないです。
「男おいどん」の原型みたいなお話です。
「男おいどん」との違いは、下宿の人間との人間関係がかかれているところかな。ちょっと、大人向けです。
しかし、基本、「男おいどん」も、「聖凡人伝」も、これも、みんな同じ話です。
孤独は、環境ではなくて、心の状態なので、何者かになれるまで彼らが満たされることはない。そして、何者かになっていても、自分で納得しない限り、満たされない。
その心というか、恨みをずっと忘れないところが、松本 零士の凄いところです。
確実に、わたしの何割かも、松本 零士で出来ています。
「聖凡人伝」も、これで完結です。
このマンガのすごいところは、何十年か後、松本 零士が生きていたら、突然、また、きのうのことのようにはじまりそうなところですね。
「男おいどん」は、おいどんが旅に出るところで終わっていますが、出戻 始のこの日常は、今も続いています。
しあわせでもなく、さりとて、不幸でもなく。
それは、永遠に続く、青春時代かも。
なんだかんだといって、けっこう女々しい主人公だと思います。
特に最後の屋台の人が家庭を持っているところにショックを受けるところとか。
でも、その女々しさが、「凡人」なのかもしれないとも思います。
基本的に、ストーリーはないのです。
これを続けるというのは、けっこう、作者にとっても難しいことだと思うのですが、松本 零士にとっては、そうでもないのかな?