魔法の言葉
長かった。
行って、帰ってこない物語。
でも、本の世界の魅力というのは、作家としては否定できないんだろうなぁ。そして、本好きとしては、多分、行ったら帰って来たくないのも本当です。
そして、ラストの妹の思いは、なんて正しいんだろうと思います。
「魔法の声」の続編。インクハートの第2部です。次巻の「魔法の言葉」で完結予定の三部作。
三部作の真ん中だけあって、ドキドキ、ハラハラの連続ですが、なんか、「続く」みたいなところで終わっています。
物語は、現実からインクハートの世界へ移ります。
インクハートの世界は、昏くて悪い奴も多いけれど魅力的な世界としてかかれています。
「魔法の声」から続いて、このお話、悪い奴がいっぱい出てきます。そこが、「魔法の声」以前のフンケのファンは注意しないといけないところです。
「竜の騎士」も、「どろぼうの神さま」も、悪い奴は出てきましたが、どっちかというと滑稽さの方が勝っていたし、主人公の方が力が強い部分が多かったのです。
でも、このインクハートのシリーズはというと、悪い奴の方は、滑稽さもあるのですが、どちらかというと残忍さの方が目立っています。
本好きが、本の世界にはいっていく話なのですが、ワクワクするよりは、ひどい目にあったこの人達が本嫌いになるのではないかという心配の方が強いです。それって、作家の自己否定になると思うので、多分、そうはならないとは思うのですが、思うのですが……。
ほんと、ひどい目にあったり、ひどいことが続くんですよ。
だからといって、おもしろくないわけではなくて、おもしろいんです。まあ、「えー、どうなるの?ここでやめるわけにはいかない」みたいな感じで、グイグイと読める感じです。
ただちょっと、トーンが暗いので疲れるかも。
おもしろかったです。
おもしろかったのですが……。
今まで、「どろぼうの神さま」と「竜の騎士」を読んで、わたしがフンケにもとめていたおもしろさと、この本のおもしろさは、少し違ったようです。
まあ、途中、修羅場が入ったということや、他の本に比べて厚いということもあるのですが、他の2冊に比べて、読むのにけっこう時間がかかったのは事実。
理由は、わかっています。
カプリコーンをはじめとする「悪者」たちの存在です。
「どろぼうの神さま」には、明確な悪者って、でてこなかった気がします。
「竜の騎士」には、金の君が出てきましたが、どこか、ユーモラスでした。しかも、悪いのは、個人で、部下は、イヤイヤしたがっている感じ。
でも、「魔法の声」の悪者たちは、本当に、悪い感じがするんですねぇ。
そして、その分、主人公たちのいたぶられ方が、いたいたしいんです。
わたしは、エリノアが、本を燃やされたところとかは、本当にきつくて読めなかったですよ。
多分、フンケにとって、こう感想を書かれることは、「成功」なのだと思います。
今までとは、違った「指輪物語」などにつながる、「嘘だけど本当の話」をつくりだしたかったんだと思います。
たしかに、何もかもに向けられる「悪意」というのは、あるのだと思います。
「魔法の声」は、続編が書かれているそうです。
どうか、魔法の声から生み出される物語が、しあわせな物語でありますようにと、祈っています。
「どろぼうの神さま」に続くフンケの2作目です。1
実は、本屋さんで目に入ったのは、「どろぼうの神さま」よりも、この「竜の騎士」の本の方が先なのです。
深く青い夜空の中を飛んでいるドラゴン。そして、ドラゴンの上にのる少年とネコ2。
このフンケ自身が描いたカバーイラストにドキドキしてしまったのです。
けっこう同じ様な名前の物語ってけっこうあって、まあ、「竜」とかいう言葉に弱いのですが(笑)、これは、カバーイラストが最高に良かったです。
で、「どろぼうの神さま」を読んで予想以上のおもしろさということで、こちらの方にも進みました。
「竜の騎士」という題名です。
わたしのイメージでは、「ドラゴンランス」の子ども向けみたいな話なのかなぁというイメージです。3
異世界の戦争の中を、竜や、小人、伝説の動物と、異世界の人間たちが活躍するような話ですね。
1章を読んでビックリ。
なんとこれ、今のこの世界を舞台にしたファンタジーだったのです。
竜たちは、静かにかくれ里に暮らしています。でも、そこにも、人間たちの開発の波が押し寄せてきます。
竜たちのなかでも、年若いルングは、相棒のコボルとシュウェーフェルフェルと一緒に、世界中のどこかにあるという竜たちの楽園「空の果て」を探しす冒険の旅に出ます。
もう、1章読み始めた瞬間から、ずっーーと、ドキドキしっぱなしでした。
特に、わたしが気に入ったのは、ネズミの飛行機乗りにして、大冒険かのローラです。
「やっほーーーっ!」
と叫びながら、愛用の飛行機で悪竜ネッセルブランドの角のまわりをぐるぐると飛びまわるところは、子どもにもどったように大興奮しました4。
キャラクター1人、1人が、ものすごく生き生きとしています。
おもしろさの質がちがうので、単純にどちらがおもしろいとはいえないのですが、「どろぼうの神さま」よりも、「竜の騎士」の方が、より小さい子に受け入れられやすいような生き生きとした話だと思います。
フンケ、超オススメです。
「魔法の声」も、読むのがすごい楽しみです。
「ハリー・ポッター」よりも、「ドラゴンランス」の方がおもしろいと思って、子どもにすすめているわたしですが、「ドラゴンランス」は、児童文学かというと、微妙だなぁと思っています。
今まで、これは最高だと思った児童文学は、「ふたりのアーサー」のシリーズだったのですが、この「どろぼうの神さま」も、それとおんなじぐらい楽しかったです。
この本に書かれていることは、ファンタジーも含めて全部、本当のことのように思えてくるんですねぇ。
それは、言葉のはしばしのさりげない繊細さからくるのかもしれません。
すごく気に入った、使ってみたいと思うフレーズが、いくつも、いくつも出てきます。でも、それらが、ガンガン自己主張をしているわけではないんですねぇ。
そのせいで、不思議な現実味があるのかもしれません。
それから、悪役とよばれる人物でさえ、すごく注意深く書かれています。
わたしは、最後の最後のまで、まさか全員があんな結論に達するとは思っていませんでした。
特に、「どろぼうの神さま」たち。
最後のページで、やられた。と思いました。
人それぞれに、価値観が違って、幸せも違う。
それは、口で言うのは簡単だし、これまでも、いろいろ物語などでも語られ続けてきました。
でも、こんなかたちで、本当に示してみせるというのは、しごくわたしにとっては、ショックでした。
「竜の騎士」も、買いに行こう。