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薄紅天女

勾玉三部作の第3部です。

三部作の正しいあり方として、一部で始まって、二部で広がって、三部で落ち着いていきます。

だから、人にオススメするとしたら、広がっていく「白鳥異伝」の方です。
で、好きなのは、落ち着いていく第三部の「薄紅天女」ですねぇ。

むかし、「ウィラン・サーガ」というオーストラリアを舞台にしたファンタジーがあって、これも、三部作で、二部がメチャクチャおもしろくって、でも、好きなのは三部なのでした。

どっちかといういと性格的に、広がっていくものよりも、収まっていく方に、惹かれるからなのかもしれません。
もちろん、きちんと広がっていないと、収まりも悪くなってしまうわけですが……。

今回は、ものすごく落ち着いた物語という印象が強いです。
けっこう、旅もしてるし、勾玉の力もあるのですが、今までのスサノオの時代や、ヤマトタケルの時代に比べると、不思議な力のウエイトが落ちてきています。

ひとつは、神々の時代が終わって、人の時代の物語になったのだなぁということ。
だから、輝の一族の力も、闇の一族の力も、かなり薄められています。
これは、時代とともに、どんどん弱くなっていく印象がありますね。

それからもうひとつは、主人公が男の子だということ。
今までは、闇の一族の女の子と輝の一族の女の子のお話で、女の子が主人公でした。
でも、今回は、いつもと立場が逆転して、闇の末裔の男の子と輝の末裔の女の子の話です。
女の子は、ぐっと背景に下がった感じで語られています。(まあ、苑上はそれなりに活躍してはいますが…)
そして、この作者の場合、どうしても、活発な女の子と、無口な男の子という感じになるので、男の子主人公だと、ちょっと、話が落ち着いたものになるのかも(笑)

でも地味だからおもしろくないかというと、決してそんなことはなく、ドキドキは、けっこう最後まで続いて、最後の方は、

「もう、終わるのと…」

とページをめくるのがもったいなくなってしまう種類の物語であることは確かです。

なんと、最近、「風神秘抄」という最新作が出たそうです。
勾玉は出てこないけど、その歴史の中にある物語であるようです。
時は、平安の末期。より、人間たちの物語になっているんだと思います。

これから読みます。楽しみです。

ちょっと、最近、荻原規子は、有名みたいですねぇ。

実家に帰ったら、兄貴もはまっていて、ビックリ。

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白鳥異伝

幼なじみ恋愛。
ある意味、べたべたな展開です。

主人公の遠子は、「BASARA」の更紗のような強さを持つ女の子です。
その一途な思いは、自らの体の成長を止めてしまうぐらいの激しさです。

一方、もうそんな遠子の思い人、小倶那は、けっこう流されているタイプの人でした(笑)

大好きな小倶那が、大蛇の剣の主となり、故郷の村を焼き払います。
そして、遠子は、誓います。

「わたしが必ず倒してあげる」

彼が「魔王」になるのなら、わたしは彼のために必ず「勇者」にならなければならない。

そう誓う女の子の話。

お話は、コンピュータのロールプレイングゲームのように、アイテムをとって簡単にレベルアップというところがあって、そのあたりに多少不満を感じたりもするのですが、キャラクター1人1人が、本当に生き生きしていて、楽しめました。

特に、遠子と小倶那が、もう1度出会ってからの展開は、なんというか、素晴らしいです。

スバルも、まぁ、もてるだろうなぁというキャラです。
でも、この物語のなかで、主要キャラなのにあんまり成長した形跡がないことが、気になるかなぁ。象子ですら、成長しているというのに(笑)
ある意味、出てきたときから、完成されすぎているのかも。
この人が、物語のトーンをものすごく楽観的にしてくれています。

児童文学と呼ぶには、実は、少し後ろ暗い本なのですが、きっと、読書好きな子どもたちにとっては、自分だけに理解できると信じているその後ろめたさも快感だと思います。

かつて本好きな子どもだった、わたしがそうであるように。