応天の門17
いい人だけでは、生きていけない。
そういう時代。
今も、そうなのかなぁ。それでも、いい人には良い人生を送ってほしいと思います。
本屋さんエッセイのなかでも、かなりつらいお話だと思います。
本好きなので、本に囲まれて幸せ的なエッセイが多いジャンルだと思うし、今まで読んできたのは、そういうのが多かった。
大変だけど、本屋やりたいなぁという感じです。
まあ、この本だってそういう側面がないわけではないけれど、置かれている状況のリアルなキツさが伝わってくる。
うーん、店長といいつつ、チェーン店の雇われ店長で、自分の店を持っていないというのが、1番つらいところかなぁと読みながら感じていました。
まあ、完全に個人経営の「自分の店」が、今、成り立つのかというと、難しいものはあるのですけどねぇ。
膳所駅前の「あゆみ書店」も、浜大津駅近くの「浜書房」もなくなっちゃいました。
ある程度のストックできるだけの広さがないと無理だしなぁ。
本屋が好きなぼくたちでも、ネット通販の便利さには逆らえない。
そうして、どんどん、この世界から本屋が減っていくのは、とっても悲しいことではあります。
原作の方の「屍鬼」。
藤崎 竜のマンガ版を読んだのは、もう10年ぐらい前になるのですね。
この人も、文章とか雰囲気づくりがめちゃくちゃうまいですねぇ。それを堪能しながら読んでおります。
全体として、閉鎖的な村の不気味さみたいなところ、雰囲気が物語の底に流れているのですが、それぞれの登場人物の立場によって、それに対する感じ方が違うというのが、すごく上手に出ています。これ、理解はしているけれど、1人の人間が書くわけで、けっこう書けていない物語も多いです。まあ、ものによっちゃ、一人称だったり、視点固定だったりしますしね。
でも、この人の場合は、全然逆に見える事があるよというのを丁寧に丁寧に書いていきます。
ただ、それでいて、全体として統一したイメージができているというのが、凄いなあと。
まあ、その分雰囲気を作り出すのに時間がかかって、物語が動いている感じがあんまりしないという問題はあるかと思いますが。
でも、その雰囲気にどっぷり浸かっちゃうと、物語の進行がどうでも良くなってくる気がする。そして、もちろん物語もおもしろいんですけどね。そこにいけるかどうかで、読者を選ぶお話かもしれません。そして、はまった人は、なんか語りたくなる感じのお話。