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軍犬と世界の痛み 永遠の戦士 フォン・ベック1

ものすごく久しぶりの気がするマイクル・ムアコックです。
最近(ここ数年かな?)、ハヤカワ文庫でも、創元推理文庫でも、「永遠の戦士」シリーズ関連で新装版が出たりしています。

「永遠の戦士」というシリーズは、ムアコックのこれまで別々に書かれていた物語を、無理矢理(?)、実はパラレルワールドでとか、実は生まれ変わりで(同じ者の別の側面で)という感じに理屈づけて、くっつけた壮大なシリーズです。
で、こうすることによって、いろいろな物語の主人公たちが、クロスオーバーで、いろいろな世界に顔を出します。

特に、ヒロイック・ファンタジーの4シリーズである、エルリック、エレコーゼ、コルム、ホークムーンは、別々のシリーズの主人公でありながら、よく一緒に冒険をすることになります。
エルリックの物語で語られたことが、ホークムーンの物語でも、別の角度から語られたりします。

わたし、クロスオーバーって好きなんですよ。

で、アメリカや、イギリスでは、この「永遠の戦士」関連のお話を全部集めた叢書が出ているそうなのですが、日本で翻訳されているのは、人気のあるヒロイック・ファンタジー関連のものが、中心であるようです。

まあ、もともと別々に書かれたシリーズなので、どこから読み出してもいいのですが、なんか指針があるといいなぁと。
で、いろいろ調べてみると、どうやらこの「フォン・ペック」のシリーズが、「永遠の戦士」叢書の第1巻らしいということで、これから、読み始めました。1

ムアコックは、かなり長く同じシリーズを書き続けている人です。
で、時代時代によって、同じシリーズでも、かなり書き方やテーマが違ってきています。

昔のエルリック・サーガだと、8巻まででいるのですが、1巻から6巻までの流れと7、8巻の雰囲気はだいぶん違います。

1巻から6巻までの前期の物語はストーリー中心の割とわかりやすい物語で、7、8巻の後期の物語は、けっこう、物語の中にいろいろな象徴を入れ込んだりした複雑な作りになっています。
だから、7、8巻は、もちろんストーリーを追いかけているのはおもしろいのですが、頭悪いので、「オレ読めてるのか?」という感じは、あります。

で、今回のこの「軍犬と世界の痛み」なのですが、ちょうど、この前期の物語と後期の物語の中間みたいな感じです。
書かれた時期的にも、そうなのかな?
ストーリー的には、けっこう単純な構造をしています。シンボリックなものは配置されていますが、それもけっこう、単純でわかりやすいものです。割と全部、物語中で説明してくれています。

昔の翻訳の題名が、「墜ちた天使」だったそうです。
たしかに、ルシフェルを巡る物語だから、それも間違えではないですね。
でも、「軍犬と世界の痛み」という題の方が、「調和」というテーマ、「癒し」というテーマには、ふさわしいかもしれません。

なんでコレが、永遠の戦士のシリーズなのかとちょっと思ったりしたけれど(まあ、アリオッチ2とかは出てきているのですが)、ラストまで読むと、まあ納得です。

ありのままの世界を受け入れるというのは、でも、ときにつらいものです。

  1. アメリカで出ているシリーズとイギリスで出ているシリーズでは、順番が違って、「エレコーゼ」の物語が第1巻のものもあるらしいですが……。 []
  2. 新訳ではアリオッホ。 []