赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝
こうなって欲しいなと読者が思っている方向に物語が動いていく。
でも、それは、読者にストーリー展開を読まれている訳ではなくって、主導権は、あくまで作者にある感じがして、すごい好きです。
石田 衣良と伊坂 幸太郎なら、あきらかに、伊坂 幸太郎の方がうまいと思うのですが、わたしが「読みたい」と思うのは、なぜか石田 衣良なんだなぁ。
おもしろいけど、伊坂 幸太郎らしく、硬い。
かっちりつくりすぎな位つくってあるなぁという印象です。
そして、スタイリッシュ。
でも、なんかが、ちょっとだけ足りないんだよ~。
今回は、ちょっと展開が読めたかな。
読めたからといって、おもしろくなくなるわけではないのですが。ミステリーとしては、「オーデュポンの祈り」、「ラッシュライフ」の方が、上かな?
まあ、「ラッシュライフ」は、超変化球でしたから、こっちはそれを思うとストレート。だから、読みやすさは、断然こっちの方が、読みやすいです。
でも、やっぱり、「ラッシュライフ」と同じく、おもしろさよりも、巧さの方にちょっと目がいってしまいがちな感じです。
まあ、しょぱなの一文から、「巧い」からなぁ。
悪くないんだけどなぁ。なんだろう?
お岩さんの四谷怪談です。
子どもの頃は、お岩さんのことを呼び捨てにしたら呪われるとよく言われてしました。
でも、京極 夏彦ですから、ドロドロドロとオバケが出てくるわけではなくて、なんか、すれ違い恋愛小説みたいになっています。
この「不思議などないのだよ」的なところとか、扱っている人間の感情の面とかで、ちょっと好みはわかれるところだと思うのですが、わたしは、けっこう気に入っています。
京極 夏彦は3冊目なのですが、この人の本って、計算されて書かれているんだけれども、伊坂 幸太郎みたいにものすごく巧い感じはしません。源泉は、もっとドロドロしたものなんだろうなぁと思います。
だから、今まで読んだ2冊は京極堂シリーズで、今回のはまた別のシリーズ(らしい)なんだけれど、しかも、時代背景も全く違うだけれども、読んだときに同じような印象を受けます。
でも、印象は似たような感じなのですが、
「どうなるの??」
と先が気になって、サクサク読めます。
伊坂 幸太郎、2冊目です。
ドンドン読ませるうまさが、ありますねぇ。
でも、この本は、ちょっと巧すぎるだろうという気が、ちょっとした。技巧にはしりすぎているというか……。
まあ、見事に騙されたということなんだけれども……。
物語自体が、どこか破綻していて、エッシャーのだまし絵のように循環構造になっていたらおもしろいなぁとも思ったのですが、「イッツオールライト」は、最初にもどる訳ではなさそうです。
そうして考えると、前作「オーデュボンの祈り」のカカシや、階段を歩く人をベランダから眺める人というのは、作者のことかと思ってしまったりします。
あんまり、こういう全能の存在が前面に出すぎると、ちょっと陳腐に感じてしまうと思うのです。
微妙なバランスで、この作品は、おもしろいの方に天秤が傾いてはいるのですが。