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がん-4000年の歴史- 下

研究をしていると、「成果」を出すようにといわれて、「成果」のないものは意味がないように思われがちです。
でも、「成果」が出なかったという「結果」こそが「成果」であるということ。その蓄積こそが、いろいろなことを前に進める道しるべとなるということを忘れてはいけない。そしてあまりにも「成果」を求めすぎると(しかも年数区切って)、研究をしている人は、どうしても結果を「成果あり」にねじ曲げてしまわなければならなくなる。

メタな分析をするときにも、その「成果」がない「結果」というのは、とても大事になります。

「やっぱりこりゃダメだ」

を確認するだけの実験とその結果報告も、とても大切なのだと思います。

急がば回れ。

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がん-4000年の歴史- 上

ノンフィクション。
ねぇさんは、辛いといって途中でやめてしまいましたが、おもしろいよコレ。

4000年の歴史といいつつ、この上巻の真ん中ぐらいで、時代はすでに1900年代に入っています。1960年代ぐらいからが本番という感じです。

未知のものと闘っているので、その戦い方が正しいのかどうかが誰にもわからない。そして、賭けているものが命というものすごい状況。最先端の医師は、常に自分が何十年も続けてきた研究や治療が、実は無意味なものだったのかもしれない、それどころか、患者の寿命を縮めてきたのかもしれないという恐怖と闘いながら走り続けなければならない。統計的な結果は、行われた後で出てくるものだから。

わたしの父親が、若い頃から(患者として)がんと関わりが深くて、いろいろな話を聞いていたので、がんに対するこの50年ぐらいの考え方の大きな変化も興味深かったです。

日本は海外よりも遅れているところがあるので、まだ、確かに、うちの親の世代にとってはがんの緩和ケアというのは、受け入れられない概念のようです。ただ、確かにそっちと併用していくように変化はしてきているなぁと感じます。

これを読むと、これから日本がたどっていく道を示してくれる気がする。その道が正しいかどうかは、また別の話だけれど。