水樹和佳子,読書ぼくを探しに,イティハーサ,ハヤカワ文庫,早川書房

イティハーサ3

おもしろいです。
もちろん、物語もなのですが……。
きのう、「ぼくを探しに」のカケラの話をかいて、今日、この本をよむというのが……。

ここでも、カケラの話がありました。

青比古という登場人物がいて、この人は、とても穏やかな人なのですが、ひとつの疑問にとりつかれている。
それは、簡単にいうと、

「人はどこから来て、どこへ行くのか?」

みたいな問いなのですが、もうその問いに囚われちゃっているんです。

だからといって、その問いに囚われて他人との交流を絶っているかというとそんなことはなくて、その問い故に、世界に対して自分をオープンにしてしまっています。

その彼が、

「おれの魂は、人としての何かが欠けているのだ」

というんです。
彼を理解している那智が、それを聞いて、

「おまえはこの美しい天地と調和できる唯一のヒトかもしれぬ。
 その欠けている魂ゆえに…」

というようなことを考えるわけです。
ここでは、欠けていることは、青比古の原動力としてかかれています。

なんか、こういうタイミングって、あるもんだなぁと思います。

シェル・シルヴァスタイン,倉橋由美子,読書ぼくを探しに,シェル・シルヴァスタイン,倉橋 由美子,子ども,講談社

ぼくを探しに

「空の色ににいてる」に出てきた絵本「ぼくを探しに」です。

なかなか、ぼくにピッタリなカケラは見つからない。見つかっても、自分が強く求めすぎてしまって潰してしまったり……。

でも、とうとう運命のカケラを見つけたぞ。そう思って転がり出すと、完璧すぎてそのせいで、今度は、周りの世界そのものが色あせてきてしまう。
これって、子どもの本ではなくて、大人にもよく理解できる物語ですよね。

子どもに、欠けた丸の絵と、

「何かが足りない」

というセリフを見せて、

「さあ、お話をつくってごらん」

というと、正確に、何かを探して獲得していく話を子どもたちは作れるそうです。
だから、この物語は、物語の根元的な形であるのかもしれません。

でも、獲得したものをあえてはなすという選択そのものに、この作者の大人……メッセージを見ました。

でも、はなされちゃった小さなカケラがこれからどうなっていくのかが、ちょっと心配になったりもしました。

一緒に、となりあって歌いながら転がっていけるといいのにね。
ラッタッタと。