眉月の誓 下 古代幻想ロマンシリーズ5
こうやってみると、不比等も、けっこう人間的だなぁと。
でも、超能力者たちは、あんまりからんでこなくなった。
うーむ。
やっぱり、主人公は、田辺大隅のようです。
次の巻は、どうやらもっと過去に戻るようです。
もう、売っているはずですが、近くの本屋にはおいてなかった。
えーと、わたしのこの時代の人たちの知識というのは、「歴史」の学習で習ったことと、「宇宙皇子」を読んでの知識ぐらいです。
だから、行基は、しっていても、「宇宙皇子」にでてきた行心とかは、てっきり創作上の人物だと思っておりました。
あと、草壁のイメージは、病弱な人。大津皇子のイメージは、ものすごく真面目な人なイメージです。
あぁ、これは、まさに「宇宙皇子」のイメージそのままですね。
「眉月の誓」の大津皇子は、なんか、ものすごく野望があって、なかなか新鮮なイメージです。
でも、大津皇子よりも、ダメダメちゃんなイメージだった草壁皇子のかかれかたの方に、今回は、
「なんかいいなぁ」
と思ってしまいました。
不比等も、最初は、草壁皇子を見て、「ダメダメちゃんジャン」とか思うわけですが、けっこう奥が深いものがありました。
あと、持統帝(そのときは、まだ天皇ではないか)の大津皇子に対する複雑な気持ちとかも、読んでいてよかったです。
どうやら、大化の改新から50年ぐらいの出来事をいろいろな角度から切り取って書いていくみたいですね。
ダイナミックな時代の動き(突然、平安時代や、鎌倉時代を舞台にするようなこと)は、なさそうです。
今回は、不比等の過去。
流されて、真人、史人と名前や境遇が変わっていくのは、自分が弱いためだと強くなろうとするお話。
不比等という名前には、自身の決意も込められているようです。
この人は、藤川 圭介の「宇宙皇子」の第1部の敵役であることぐらいしか知らないのですが、こんな過去があったと思うと、けっこう、今の彼も理解できるような気がします。
ところで、超能力者が狂言回しと書きましたが、実は真の狂言回しというか、影の主人公は、田辺 大隅というお祖父ちゃんではないかと思った。
今まで、聞いたことない人だ。
検索をかけると、長岡 良子関係のページが、いっぱい出てきた(笑)
どうやら、京都、滋賀県のあたりに、実際にいた人らしいということはわかるのですが……。
「夜の虹」は、現実的な理想(管理された社会)を追う不比等と、小角たち異形の者たちの対立のお話。
最後の不比等の一言は、けっこう、印象的です。
そうしなければならない彼の悲しさが伝わってきます。
カラーの絵を見ていると、「百億の昼と千億の夜」のころの萩尾 望都みたいな雰囲気です。
ストーリーは、最初の話とかは、山田 ミネコの「緑の少女」を思い出してしまいました。
あと、少女が一瞬で大人になっている「葦の原幻想」のテーマとかも、けっこう、似たものを感じます。
そして、短編連作で話を続けていって、狂言回しに超能力者(神)たちがいるというのは、なんだか、神坂 智子の「シルクロードシリーズ」を彷彿とさせます。
第1話が掲載されたのが、1984年だから、多分、その辺の作品のというか、作家たちの影響というのはあるのだろうと思います。
それでも、いろいろなものを吸収して、自分独自の世界をつくっているなぁというところは、好きです。
あとの話にでてくる史は、多分、藤原 不比等なんだろうなぁ。
あの人って、イメージ的に、恋をするような人ではないので、これからどうなっていくのかなども、気になります。
短編連作で、いろいろな角度から切り取っていくという形も、この物語にとてもあっているなぁと思います。