押絵と旅する男 江戸川乱歩全集5
いろんな江戸川 乱歩が読める1冊です。
幻想と怪奇から、ヘンタイまで(笑)
でも、これが、乱歩の味なのだと思います。
ところで、この「蜘蛛男」のトリックは、どこかで以前、読んだ覚えがあるのですが?
少年物にリライトされたかな?
このありたの物語は、江戸川乱歩マニアには、けっこう評判が悪いようです。
これまでも、ときどき注釈にツッコミをいれられていましたが、この巻は、酷い。
でもこれは、わたしは、乱歩が酷いのではなくて、注釈が酷いと思います。
注釈なんて、自分の解釈を披露する場じゃねぇだろう。でしゃばってんじゃないよ!!
1つ1つ読んでも、それほど悪いとは思いません。
トリックの焼き直し?それがどうした。
前の物語との整合性?それがどうした。
夢こそまこと
その意味が、わかってねぇんだろうな。
こんな風に、乱歩をバカにして悦にいるんじやなくて、自分の頭で物語を補完しろ。
そう言いたくなりました。
そういえば、わたしが子どもの頃、少年探偵団や、怪人二十面相をテレビドラマでやっていた記憶が。
解決編は、全然おぼえていないのに、なぜか、あの怪しい老人とかにさらわれる場面は、おぼえています。
夢の中で、なぜかわたしは、小林少年ではなくて、さらわれる少年でした。
そんなことを思い出させる少年物。好きです。
なぜ、二十面相が、これほど執拗に、わざわざ明智や少年探偵団を指名したようにして、事件をおこすのか?
実は、わたしは、以前からなんとなく考えていた彼の正体が、今回、わかったような気がします。
そして、不可解な彼の目的も。
されを今、ここで書いちゃうのは、とっても無粋な気がするのでやめておきます。
でも、明智 小五郎や、小林少年が、世代交代をしているのならば、きっと二十面相の方も世代交代をしていて、そして、少なくともその二代目の正体は、きっと……。
だから、彼と明智の目的は、実は一緒だったのだと思います。
少年たちのために。
そして、それは、もしかすると乱歩の思いとも重なっていたのかも。
第2巻にして、いきなり
「書けない~」
と叫んでいる江戸川 乱歩でありました。
割とこの全集は、年代順に並んでいるようなので、その後、28巻分も文章(小説だけではないけれど)を書いたというのは、すごいですねぇ。
1巻で、本が2~3冊分はありますから、少なくとも60冊ぐらいは書いていることになります。
で、わたしが江戸川 乱歩にもっている猟奇的なイメージは、このあたりの作品のようです。
おもしろいと思うけど、このあたりの作品の評価が、乱歩自身低いのは、本人が、
「こんなんじゃなくて、本格推理を書きたい!!」
と思っていたからなんだろうなぁと思います。
1巻を読むと、もともとが、本格推理をさらにひねったところから出発しているので、自分の作品のアラや、限界が見えちゃうんだろうなぁと思います。
しかし、古今の名探偵が思わせぶりでイヤな奴なのは、もしかしたら、作者がそのときにはトリックを考えられていないからいもしれないと思ったりして。
まあ、あんまりすぐに推理を披露しちゃうと、お話が続かないのだけど……。