水樹和佳子,読書ぼくを探しに,イティハーサ,ハヤカワ文庫,早川書房

イティハーサ3

おもしろいです。
もちろん、物語もなのですが……。
きのう、「ぼくを探しに」のカケラの話をかいて、今日、この本をよむというのが……。

ここでも、カケラの話がありました。

青比古という登場人物がいて、この人は、とても穏やかな人なのですが、ひとつの疑問にとりつかれている。
それは、簡単にいうと、

「人はどこから来て、どこへ行くのか?」

みたいな問いなのですが、もうその問いに囚われちゃっているんです。

だからといって、その問いに囚われて他人との交流を絶っているかというとそんなことはなくて、その問い故に、世界に対して自分をオープンにしてしまっています。

その彼が、

「おれの魂は、人としての何かが欠けているのだ」

というんです。
彼を理解している那智が、それを聞いて、

「おまえはこの美しい天地と調和できる唯一のヒトかもしれぬ。
 その欠けている魂ゆえに…」

というようなことを考えるわけです。
ここでは、欠けていることは、青比古の原動力としてかかれています。

なんか、こういうタイミングって、あるもんだなぁと思います。

水樹和佳子,読書イティハーサ,ハヤカワ文庫,早川書房,百億の昼と千億の夜

イティハーサ2

この時点で、亜神が古き神の跡を継ぐよき神々で、威神がそれに対立する悪しき神々。
そして、その2つの神々の下にいる人間たちも、同じように、威神のところには、悪役がいる……。
そんな風に見えるようにかきながら、作者の目は、しっかりと遠くを見ていたんですねぇ。

すべてを受け入れて、肯定し、許す神。その姿からは、決してそうとはうかがいしれないけれど。

そう。「百億の昼と千億の夜」で阿修羅王が必死な思いで守ったあの世界は、56億7千万年の後に滅びてしまったのですが、もしかすると、この世界は……。
あの思想に負けずに、生き延びていくのかもしれない。

それが、誰にも支配されない「神名を持つ國」の意味というか、存在理由なのかもしれません。

水樹和佳子,読書イティハーサ,ハヤカワ文庫,ファンタジー,早川書房,水樹和佳子,百億の昼と千億の夜,SF

イティハーサ1

再読です。
こうやって、時間をおいてから読むと以前は理解できなかったことがよく見えてきます。

たとえば、この話がかなり細部まで作りこまれたうえでかかれたものだということは、もちろん以前も感じていたのだろうけど、こうして物語を知ったうえで読むと「ここまで考えられていたのか」というところがたくさんあります。

たとえば、鷹野の感じているトウコを威神に連れて行かれてしまう不安や、トウコの感じているもう一人の自分に対する不安などは、最初に読んだときは、1人の人間のなかにある二面性みたいなものを示すために出てきているのかなぁと思ったりしていました。
でも、実際に読み進めていくにつれて、実は、それが形をもったものであるということがわかっていきます。

また、桂の弟の話とかも、以前は、出てきたときにはすっかりその伏線を忘れていて(笑)、

「なんで、こいつが桂の弟なんだろう……」

とか思ってましたが、ちゃんと、こんなにも前にフリがあったのですね(笑)

以前は、ファンタジーとして読んでいたのですが、今回こうして改めて読んで見ると、これもまた「百億の昼と千億の夜」みたいな壮大なSFなんだなぁということがよくわかります。
すべてが、あのラストに向かって収束していくようすが、とってもよく見えます。

更新雑記イティハーサ,ハヤカワ文庫,光瀬 龍

1日目は、松本零士さんの作品です。
2日目は、もう、解答が出てますねぇ。でも、わたしは、まだ読んでなかったりして…(笑)ハヤカワ文庫版を持っているのですが、「イティハーサ」を読み返してから読もうとか思っているとなかなかに…。
今日のは、原作・光瀬 龍だったような気がします。