アルジャーノンに花束を
「アルジャーノンに花束を」再読。
もう、20年ぐらい間が空いていて、けっこう、前に読んだ時と印象が違う。
賢くなったチャーリーのいけすかないヤツな感じが、今はとても良くわかる。
それでも、変わらない部分もある。
妹に再会した場面の幸福感。母親が本当はなにを恐れていたのかということがわかるときの怖さとか。
そして、物語が終わるのがもったいないという気持ち。
多分、また読むんだろうなぁと思います。
名作。
名作、なめてたわ。
ハインラインって、実は「宇宙の戦士」しか知らなくて、まあ、あれ、おもしろいかというとイラスト以外は微妙じゃないですか。
でも、これは、文句なしの名作です。
まあ、この21世紀は、まだきていないわけですが、この未来視の能力というのは、すごいなぁと思います。
これ、i-padだ~というものも出てきています。
でも、そういうギミックな部分だけではなくて、この主人公がいいですよねぇ。
好きにならずにいられない技術者気質な人です。
ストーリー自体は、ベタベタな展開なところもあるけれど、安心してドキドキできる。
そんな古典的名作SFです。
売り文句は、21世紀版の「アルジャーノンに花束を」。
うん、その言葉に負けないだけの凄い作品です。
でも、読後の印象は、かなり違うものです。
以下、ネタバレありかもしれません。
けっこう分厚い1冊です。
「永遠の戦士 フォン・ベック」シリーズの2冊目。とかいっても、主人公は、1巻目のフォン・ベックではなくて、マンフレッド・フォン・ベックという、1巻目の主人公の子孫です。
で、主人公も違うのですが、物語の質も、なんか1巻目と全然違う感じなんですが……。
1巻目は、いきなりルシフェルが出てきて、かなりストレートなお話でした。でも、この2巻目は、かなりまどろっこしいです。
偽史をずっとかいているのですが、このあたりは、わたしは知識がないので読み取りきれいないと思います。だから、もしかすると、知識がある人は、ここにファンタジーを感じるのかもしれませんが……わたしにとっては、ずーーっと、ファンタジー的な要素がみえてこないのです。
もう、この厚い本のまん中ぐらいまで、普通の歴史小説みたいなかんじです。
だから、クロスターハイムが出てくるあたりまで、なんかお話が動き出す感じがしなくて……。おもしろくないわけではないのですが、まどろっこしくて、なにが言いたいのかわからないという……。
いやでも、「ストームブリンガー」から後のエルリック・サーガとかも、こんな感じだった気がします。
象徴を読み解くには、それ相応の知識と知性が必要ですねぇ。わたしには、明らかにそれが足りていない感じです。
でも、足りてないところを自分勝手に想像して、こねくりまわすのも、楽しいのですが。
うーん、難しい。
ものすごく久しぶりの気がするマイクル・ムアコックです。
最近(ここ数年かな?)、ハヤカワ文庫でも、創元推理文庫でも、「永遠の戦士」シリーズ関連で新装版が出たりしています。
「永遠の戦士」というシリーズは、ムアコックのこれまで別々に書かれていた物語を、無理矢理(?)、実はパラレルワールドでとか、実は生まれ変わりで(同じ者の別の側面で)という感じに理屈づけて、くっつけた壮大なシリーズです。
で、こうすることによって、いろいろな物語の主人公たちが、クロスオーバーで、いろいろな世界に顔を出します。
特に、ヒロイック・ファンタジーの4シリーズである、エルリック、エレコーゼ、コルム、ホークムーンは、別々のシリーズの主人公でありながら、よく一緒に冒険をすることになります。
エルリックの物語で語られたことが、ホークムーンの物語でも、別の角度から語られたりします。
わたし、クロスオーバーって好きなんですよ。
で、アメリカや、イギリスでは、この「永遠の戦士」関連のお話を全部集めた叢書が出ているそうなのですが、日本で翻訳されているのは、人気のあるヒロイック・ファンタジー関連のものが、中心であるようです。
まあ、もともと別々に書かれたシリーズなので、どこから読み出してもいいのですが、なんか指針があるといいなぁと。
で、いろいろ調べてみると、どうやらこの「フォン・ペック」のシリーズが、「永遠の戦士」叢書の第1巻らしいということで、これから、読み始めました。1
ムアコックは、かなり長く同じシリーズを書き続けている人です。
で、時代時代によって、同じシリーズでも、かなり書き方やテーマが違ってきています。
昔のエルリック・サーガだと、8巻まででいるのですが、1巻から6巻までの流れと7、8巻の雰囲気はだいぶん違います。
1巻から6巻までの前期の物語はストーリー中心の割とわかりやすい物語で、7、8巻の後期の物語は、けっこう、物語の中にいろいろな象徴を入れ込んだりした複雑な作りになっています。
だから、7、8巻は、もちろんストーリーを追いかけているのはおもしろいのですが、頭悪いので、「オレ読めてるのか?」という感じは、あります。
で、今回のこの「軍犬と世界の痛み」なのですが、ちょうど、この前期の物語と後期の物語の中間みたいな感じです。
書かれた時期的にも、そうなのかな?
ストーリー的には、けっこう単純な構造をしています。シンボリックなものは配置されていますが、それもけっこう、単純でわかりやすいものです。割と全部、物語中で説明してくれています。
昔の翻訳の題名が、「墜ちた天使」だったそうです。
たしかに、ルシフェルを巡る物語だから、それも間違えではないですね。
でも、「軍犬と世界の痛み」という題の方が、「調和」というテーマ、「癒し」というテーマには、ふさわしいかもしれません。
なんでコレが、永遠の戦士のシリーズなのかとちょっと思ったりしたけれど(まあ、アリオッチ2とかは出てきているのですが)、ラストまで読むと、まあ納得です。
ありのままの世界を受け入れるというのは、でも、ときにつらいものです。