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サウンドトラック 下

絶賛の上巻だったのですが……。
間をあけたのが悪かったのか、ちょっと下巻の最初の方は乗り切れず……。
あぁ、もしかしてわたしは、ヒツジコは好きだけど、トウタとはあんまり合わないのかもと思ったり……。

でも、ヒツジコのパートにも乗り切れなくなっていて、なんだろう、今までメチャクチャ、ものすごいリズムだと思っていた文章が、急に濃すぎる感じになってしまう。

リアルな世界で起きているコロナの所為かもしれないとも思います。この20年近く前に書かれた近未来、現実と区別がつかない。ひどい現実はフィクションすら壊していく。
でも、組み立てられた物語は、ひたすら推進力を持って進んで行く。カタストロフに。
いつの間にか、また、その渦に巻き込まれていく。

ふーん、これがフルカワ紀元の元年ならば、もっと先を読んで見たい。

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サウンドトラック 上

格好いいわ。
本当に、この人、嘘の歴史を書いているときは、活き活きしているなぁと。
それが、海外の戦記であろうが、映画の歴史であろうが、家族史であろうが、歴史である限りまったく関係なしに、活き活きしています。

そして多分これは、近未来の歴史。

トウタとヒツジコの2人が、何を破壊して、なにを作り上げていくのか。もしくは、なにもつくりあげないのか。
ものすごく気になる。

超中二。多分、あわない人には、とことんあわない。

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LOVE

古川 日出男は、見てきたように小説(ウソ)を書く。
いや、もしかしたら、本当に見てきたのかも。

二人称の短編連作小説。1話ごとに、主人公も語り手も変わっていく。
最後で語り手が誰か明かされるけど、明かされた語り手が、本当に主人公の行動をすべて見れる位置にはいないのに語っていたという不思議。そして、それでも見えていると強引にいっちゃうところが、この小説のすごいところだと思います。

「ハート/ハーツ」を読んでいるときは、今ひとつノれない文体だなぁと思っていたのですが、「ブルー/ブルース」で加速した。格好いい。いつも、この人の小説に感じるのは、この格好良さです。中二的な。それは、物語的なといってもいいかも。
ニヒルだけれど、正しいことはきっとあるよという強いメッセージであったり、この風景のなかに、いつか行ってみたいと思わせるもの。
どこか一線でリアルを超えて、よりリアルに感じる世界。

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二〇〇二年のスロウ・ボート

彼が治療に何の効果もなくて、自分がそんな者必要なく良くなったのだと考えるのなら、それはそれで、結構。
つまり、治療がとても上手くいったということなのだと思う。

という感じで、アレのリミックスということで、かなーり、ギチギチに警戒して読み始めた「二〇〇二年のスロウ・ボート」ですが。
コレは、アレの100倍ぐらいおもしろいです。
というか、どこまで行っても、ストーリー指向です。古川 日出男。雰囲気だけで書いているアレとは大違いだと思います。

まあ、これはわたしがストーリー指向であるためだと思います。

そして、これも偽史。ここでも、さりげなくフィクションの歴史が、現実を侵略してきます。
徹底している。

特に好きなシーンは、ブラック・ジャックの様に、女子高生が制服の裏の包丁を見せたるところ。
そこから先の疾走感は、最高です。

そういえば、このお話では、走るっていうのが、ものすごい大事なテーマになっています。脱出のために。そして、何かを得るために走る。
最後の手紙まで、本当にドキドキして読みました。

でこねぇさんは、この本を見て、

「これ、あの怖い話書く人だよねぇ」

といっていました。
わたしは、この人、怖い話というイメージはまったくないのですが。
ひたすら、中二的にかっこいい。

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僕たちは歩かない

えーと、今まで読んだ古川 日出男作品のなかでは、1番地味です。ふんわりとした感じ。
そして、これもやっぱり「偽史」です。でもこれは、ものすごく狭い感じの人たちに向けて書かれている感じがする。

「僕」が語る物語で、「僕」も物語の当事者であるはずだけれども、「僕」って誰という感じでわざと希薄にしてあります。 そこを希薄にすることで、誰でも「僕」に入り込める仕組みになっている。
にもかかわらず、なぜかこれって、個人(小さなグループ)に向けてなお話に感じられるんですよねぇ。
物語を書く動機が、ものすごく個人的なもののような気が。わからないけど。