勇者ダン 手塚治虫文庫全集
動物に育てられた子どもが……という、ターザン的なお話が2編。
「勇者ダン」の方は、アイヌとそれがもつ超文明ということで、手塚 治虫の工夫というか、ロマンが見られます。
あとの「シュマリ」や、「三つ目がとおる」に繋がっているテーマかなぁとも思います。
おもしろいのが、ダンっていう名前が、主人公のアイヌの子どもの名前ではなくて、相棒のトラの名前だというところですね。その感覚は、すごいわ。
昔、ブラック・ジャックの手術のうち、何パーセントが成功で、何パーセントが失敗だみたいな、本がありました。
あれが、謎本の始まりみたいな感じだったと思います。
でも、ときにドラマは、手術が成功するかどうかなんて、どうでもいいという物語もあったりします。
それ以前に、手術するのかしないのかというドラマがけっこう多いし、結果は、けっこうドラマの外側で読者にゆだねられています。
まあ、ページ数が少ないというのもあると思うのですが、手塚 治虫が物語の中でフォーカスしたかったところを明確に知っていたということもあるのだとろうと思います。
もちろん読者は、結果なんか聞かなくてもブラック・ジャックが手術したんだから、成功したに決まっていると信じているのですが、見るべきところはそこだけではないよと伝えている気がします。
「しめくくり」は、手塚 治虫の生き方そのものですねぇ。