結晶銀河 年刊日本SF傑作選
前巻から、3年以上かかってしまいました。
ほぼ10年前。10年前なんて、ついこの間のことのようです。なんか、一種SF的な時間の流れの中を生きている気がします。
伴名 練「ゼロ年代の臨界点」とか、山本 弘「アリスへの決別」とか、わかりやすいのが好きです。月村 了衛「機龍警察 火宅」とかもハードボイルドで悪くない。
でも、西島 伝法「皆勤の徒」とかは、意味も、なにがおもしろいかもさっぱりわからないのでした。いやぁ、これ、苦しかった。
「墓碑銘は青春」。
これは、木原 敏江の名作「天まであがれ!」の言葉なのですが、どうしても、ここで使いたかったのです。
だれの墓碑銘にも、きっと「青春」と書かれている。
こんなに、青春なお話だとは思っていませんでした。
でも、熱量いっぱいに悩む光圀のそばに、いろんな人が集まってきて、それぞれの夢を託したりする様は、まさに、青春そのものです。それを冲方 丁が、また、見てきたように書くんですよ。面白くないわけがないという。
林羅山とか林家なんて、ものすごく悪い印象しかなかったのですが、林読耕斎なんて、一気に好きになってしまいました。
で、この物語の中で貫かれているのは、「歴史の中に生きていた人間」は、すべて「生きていた」のだ。そのことを伝えたいという思いなのです。
多分それは、冲方 丁のなかでは、「歴史」ではなくて、「物語」として置き換えてどっしりあるのではないかと思います。「物語の中に生きている人間は、すべて生きているのだ!」と。
だから、生き生きしている。そんな気がします。
ファンタジー、歴史物を読んできて、現代物。
格好良さというか、中2っぽさ全開。好きです。漢字の使い方が、かっこいいです。まあでも、これをかっこいいと思うのは、ヤンキー的な、夜露死苦的な感じがないこともないですが。
「天地明察」は、ちょっと中2っぽさは少なかったかな?
まあ、題名と初手天元とかは、ちょっといい感じか。
これを読んでいる間、古川 日出男古屋を思い出していました。とんでもない話なのに見てきたように書くところがにているのかなと思います。
この2人は凄いです。
それにしても、これが16歳の処女作。おとろしい話です。
荒い。でも、ものすごいものが埋まっている感がメチャクチャします。
これが、洗練されて、「ばいばい、アース」にもなるし、「天地明察」にもなっていくんですよねぇ。